青少年健全育成条例 東京都と出版業界の対話

東京都と、出版業界、あとは保護者の代表を集めて、青少年健全育成のための図書類の販売等のあり方に関する関係者意見交換会というものが開催されました。
期間としては、2010年の夏、つまり非実在青少年という言葉が過剰に取り上げられて、条例案が可決されずに終わったあとになります。


2回ほど開催されているのですが、これの議事録に目を通して見たんですが、正に今の状況の縮図とも言えるようなものが繰り広げられています。
会議の議事録なので、あまり面白いものではないですが、目を通す価値はあります。
また、この意見交換会については、日本雑誌協会編集倫理委員長も言及しているので、反対している方もぜひ見るべきだとおもいます。


――6月に一度否決されたものが生き返ってきたのですが、6月の時点とは何が変化したのですか。


山 6月に否決された後、都青少年課と東京都小学校PTAの幹部の方は、都議の選挙区72ヵ所を回って、キャンペーンを展開しているんです。これが一番効果がありました。我々やマンガ家の代表が参加した意見交換会も開かれましたが、「いかに出版界の規制が甘いか」ということを指弾するだけの会なんです。「映倫や放送番組向上機構はここまでやっているのに、出版界はどうなんだ」、という話になる。条例の改正案を通すための一方的な意見“交換”会ですよ。警察官僚の作戦勝ちですね。


青少年健全育成のための図書類の販売等のあり方に関する関係者意見交換会
http://www.seisyounen-chian.metro.tokyo.jp/seisyounen/09_ikenkoukankai.html


2回目の最後のやりとりを見て、ちゃんと東京都はレイティングなどをやろうとしてるように受け取れるやりとりが残っています。
しかしそれを最後に、3回目はありませんでした。


何故開かれなかったかと言うとこの動画の10:00〜12:00において、浅野克彦都議と長岡義幸氏が言及しています。


2011/03/02 追記開始


上で見てほしいといった動画が残念ながら消されてしまったようです。
出版側から対話をけったという確かなソースが無くなってしまいました。
一応、こういうものがありますが、賛成派の都議の言ですので、今ひとつ強さに欠けますね。


と思っていたら、まだこれからいけるようです。


2:09:00くらいから見てください。


2011/03/02 追記終了


条例に組み込まれるからということで、業界側から出席するのを取りやめたということのようです。
そして、自主規制については、ちゃんと都に知らせてあるというのであれば、
尚の事、それを業界はきちんと表にだして、こういう事をやっていたと言うべきではないのでしょうか?


ただ、そうであるとすると、議事録に残る会話は非常に不思議な会話になっているきがします。
自主規制のルールがしっかり把握されているというのであれば、都側に対して、あの資料がということで済むのではないかと、素人には思えてしまうのですが。


この点について、非常に気になったので、その自主規制のルールが書かれていると動画の中で漫画擁護のジャーナリスト長岡義幸氏が言われていた、水色の条例の手引書というのを求めて都庁にいってみたのですが、
都庁第一本庁舎3階都民情報ルームにて、"東京都青少年の健全な育成に関する条例の解説"という水色の表紙の資料を簡単に見つけることが出来ました。


たしかに、後ろの方に、自主規制について書かれています。出版だけではなく、映画やゲーム、放送に関しても情報が記載されています。


さて、出版・販売関係で記載されているものですが、まず組織として


出版倫理協議会 以下の4組織にて構成


日本書籍出版協会
日本雑誌協会
日本出版取次協会
日本書店商業組合連合会


首都圏新聞即売懇談会


日本雑誌広告協会


出版倫理懇話会


が記載されています。
そして、自主規制の内容として記載されているのが以下の19項目になります。


(1) 出版倫理協議会の自主規制についての申し合わせ
(2) 成年向け雑誌に関する自主規制の申し合わせ
(3) 出版ゾーニング委員会
(4) 出版倫理綱領
(5) 雑誌編集倫理綱領
(6) 出版物取次倫理綱領
(7) 出版販売倫理綱領
(8) 編集倫理綱領
(9) 編集倫理規定
(10) 雑誌広告倫理綱領
(11) 雑誌広告掲載基準
(12) 新聞倫理綱領
(13) 新聞販売綱領
(14) 新聞広告倫理綱領
(15) 新聞広告掲載基準
(16) 新聞折込広告基準 
(17) 青少年健全育成に関する協力のお願いについて(各書店に対して)
(18) 東京都作成「改正と条例リーフレット」の送付について(各書店に対して)
(19) 東京都新聞即売スタンド倫理化審議委員会規則


ウェブ上で公開されているものは参照可能なアドレスを貼り付けてあります。
無い物については、自分で探すなりしてください。内容は大差ないレベルのものだと言っておきます。
全体として理念というか骨子というか、表現としては、そういうレベルであり、
これを元に自主規制を行っていると言われても、私には全く基準が見えてきませんでした。
自主規制基準として、これしか提示できず、これを元に自主規制をしていると言われても、現実として、現状の毎月不健全図書が指定され
また、他道府県では、さらに多くの本が有害図書になっている事実があり、発言と実態が激しく乖離していることが浮き彫りになっただけでした。


きちんと行われているか、第三者から見て判断できるようなものを用意することくらいできないのでしょうか?
CEROが行っていることと比べると、あまりにも幼稚であり無責任であると思います。


さらに、動画で長岡義幸氏が、上記のものをもとにいろいろ話し合いをしてやってきたと言ってますが、
時代は変わって、行政は情報を開示し、また CERO のようにどういう基準で審査を行うのか見えるようにすることで、第三者でも容易に確かめることができる体制を作る自主規制団体が出来るという時代の流れを感じることはできなかったのでしょうか。
青少年課の体制がかわったからうまく行かなくなったというのは、それは言い訳になるのでしょうか。


この点についても、もう少し細かく検証してみます。


Wiki からですが、2004年(平成16年)にはコンビニエンスストア等で販売されるいわゆる「グレーゾーン誌」に対し立ち読み等で中身を見られないようにする「シール止め」措置の実施(翌年からは「2ヶ所シール止め」に発展)など、世論からの成年向け書籍・雑誌に対する批判を受けた数々の自主規制措置を行っている。
これが、業界側が行なってきた自主規制だったものが、H16 の条例改正にて、以下のように条例に組み込まれたことが出版業界の反発を招いたとジャーナリストの長岡義幸氏が主張しています。
これは、上にある動画の中で言われているので、きちんと私が見て欲しいといったものを見てくれていればわかるはずかと思います。


何分、改正が結構前で、変更点を示したドキュメントも公開されておらず(おそらく情報公開が進む前の事と思います)、結局条文を漁って、附則からの理解したわけですが


附 則(平成一六年条例第四三号)


第九条の二の改正規定、同条の次に二条を加える改正規定(第九条の三に係る部分に限る。)


第九条の二 図書類の発行を業とする者(以下「図書類発行業者」という。)は、図書類の発行、販売若しくは貸付けを業とする者により構成する団体で倫理綱領等により自主規制を行うもの(以下「自主規制団体」という。)又は自らが、第八条第一項第一号の東京都規則で定める基準に照らし、青少年に対し、性的感情を刺激し、残虐性を助長し、又は自殺若しくは犯罪を誘発し、青少年の健全な成長を阻害するおそれがあると認める内容の図書類に、青少年が閲覧し、又は観覧することが適当でない旨の表示をするように努めなければならない。
2 図書類販売業者等は、前項に定める表示をした図書類(指定図書類を除く。以下「表示図書類」という。)を青少年に販売し、頒布し、又は貸し付けないように努めなければならない。
3 図書類発行業者は、表示図書類について、青少年が閲覧できないように東京都規則で定める方法により包装するように努めなければならない。


つまりこの部分を東京側が勝手に組み込んだという主張になるわけです。


長岡義幸氏の主張では、前々から業界がやっていたことを勝手に条文に組み込まれたことが不信感につながったということなんですが
確かそれと共に長岡義幸氏は、こういう主張もしています、文化局の時代にはうまく話をしてやっていたが、現在の治安対策本部の管轄になってから話し合いができなくなったとおっしゃられています。
ただ、東京都青少年・治安対策本部ができたのは、2005年8月1日であり、この条例の改正が行われた後になります。これでは、この時点では、うまく行っていたのか、うまくいってなかったのかどちらなんだとなってしまいますね。


そして、彼の主張を受け入れるとすると、5年もの間やり方が変わったことを受け入れられずにきたということになってしまうのですが、それで良いのでしょうか?


まあ、あの動画で見てほしいといったところだけで、他にもこんな発言をしているのが確認できますしね。


青少年健全育成条例 ジャーナリスト長岡氏の発言